
著者紹介 三枝 寛和 先生
(員外監事・税理士法人「第一会計」代表取締役)
昨年より急激に原油価格が上昇しています。今年度末には現在取引されている価格(ガゾリン価格で1リットルあたり170円)が1リットルあたり200円にも迫ろうという勢いになっています。なぜ、原油の価格が急激に上昇しているかという一般的な説は、原油先物市場に巨額な行き場のなくなった投機マネーが流れ込んでいる為だとされています。どのような原因で原油価格が上昇しようとも、私達先進国に住む人間は、石油製品に関係なくしては生活できないようになっており、価格が高いからといって使用しない訳には行きません。原油価格の上昇は消費者物価のあらゆるところに影響してきています。例えば野菜です。野菜などは殆ど原油価格に影響されないように思われますが、店頭に並んでいる野菜の価格は、油の価格といっても過言ではありません。国内野菜の多くはハウス野菜です。ハウスで野菜を育てるのには多くの軽油が使われます。配送、梱包、包装にも軽油、石油製品が使われ更に店頭で販売する際の電気、冷暖房も原油価格に左右されます。販売価格の約50%以上が油の値段だと言われています。
一般の消費者物価が上昇すると必然的に、消費が冷え込み各企業の収益が落ち込みます。企業収益が落ち込むと、大企業から中企業へ、中企業から小企業へと仕入価格等のダンピングが始まります。こうなると大企業は収益が何とか保たれるのですが、中企業、小企業へと行くにしたがって収益が激減してきます。また、企業収益が落ち込むと給与の昇給を止めたり、賞与等のカットが始まります。いわゆるスタグフレーションです。高校時代の社会科で学習した覚えがある項目ですが、経済政策的には最も対応が難しいとされている状況です。スタグフレーションは景気が悪化するとともにインフレーションが進行する状態を言います。インフレーションは景気回復局面で発生すれば雇用や賃金の増加もともない、物価も上がりますが給与も増え国民はなんとなく幸せな気分にもなれます。また、デフレーションは景気後退局面で発生すれば雇用・賃金は減少するが物価は安くなります。この状態はバブル崩壊後日本が経験してきたことで、苦しい局面もありましたがなんとなく乗り切ってきました。しかしスタグフレーションは雇用や賃金が減少する中で物価上昇が発生し、貨幣や預貯金の価値が低下するため生活が苦しくなります。
このように原油価格上昇はあらゆるところに経済的に波及し、大企業より中小企業に、高額所得者より低所得者へと社会の弱いところにダメージを与えます。これらに対する対策は一企業、一個人では出来るだけ無駄なエネルギーを使わないようにすることでしか対処しようがありません。とどまるところ大きな対策は政府に担ってもらうことになります。
恐らく政府は、スタグフレーションへの対処法を持ち合わせておらず、今後政策的には大きな期待することは出来ないと思われますが、出来るだけ早く現状を分析し大きな社会的不安を増やさないようにしてほしいものです。
政府は2006年1月、「IT戦略本部」が策定した「IT新改革戦略」で、オンライン方式による診療報酬請求義務化を「緊急課題」として位置づけ、4月10日の厚労省省令第111号により、レセプトオンライン請求は、2008年4月から段階的に施行、2011年4月から原則全て義務化されることとなった。
また2006年6月に成立した「医療改革関連法」で打ち出された、「医療費適正化計画」、「医療保険制度の都道府県単位化」、「特定健診・特定保健指導」とのリンク、より詳細な「医療機能情報」の提供、地域ごと、年齢ごとの「新診療報酬体系への効率的な対応」、「指導・監査、立入検査等への効率的な活用」、「保険者機能の強化」などの実現は、診療報酬オンライン請求による「情報のデータ化」、「データの蓄積」、「保険者への集中」がなければ実現しないものである。

著者紹介 中村 厚 先生
(大阪府保険医協会副理事長)
2008年4月から市民健診にかわって開始される特定健診とは、メタボリック症候群に偏った健診制度でそのデータはレセプトデータと突合され、個人の健康管理を保険者が集中的に保健指導という形で実施し、その結果を個人に自己責任という形で強いる制度である。この際には「社会保障番号」という問題の多いシステムも将来導入が予定され、住基ネットなどとの連動し「国民総背番号制」に繋がる恐れが極めて高い。
また一方で政府・厚労省は特定健診と併せ、集約したデータでナショナルデータベースの構築を目論んでいる。医療費を管理し、医療全体を監視する上で、これ以上有用なデータはない。全ての診療行為、病名がコード化されることにより、どこをどう変えれば医療費が下がるのか手に取るようにわかる。レセプトのコンピューター審査も当然で、我々個々の診療所の診療内容、経営状況も丸裸にされ、“標準”から外れた行為には厳しい指導がなされることは想像に難くない。
オンライン請求義務化とあわせてセキュリティに関するガイドラインが作成された。中身は一定の体裁は整えてはいるが、本当に厳守されるのかは極めて疑わしい。まして漏洩の際の責任が医療機関に押しつけられるとすれば論外である。規制改革・民間開放推進3カ年計画には、“民間等も含め活用する際、過度に厳重な用件を課していたずらに利用を制限することのないよう…利用環境の整備を図る。”と明記されている。
生命保険会社、健康食品や関連産業、そして規制緩和された医療機関、介護関連事業者にとってまさに喉から手が出るほど欲しい情報であることは明らかである。これが“漏洩しない”と考える方がよほどおかしい。どこまでが情報の利活用でどこからが漏洩なのか。
我々医師には患者情報の秘守義務があり、オンライン請求は個人情報漏洩に繋がる危険な行為であることを認識しよう。「あなたの健康情報を国や保険者に提供しても良いですか?」と訴え、国民・患者を巻き込んだ運動を推進し、レセプトオンライン請求義務化には断固反対の声をあげていくことが、いま最も重要な課題である。